皆さん、こんばんは。六代目当主の中谷正人です。
連載の二十九回目。家飲みの楽しみを分かち合いましょう。
11月下旬になってようやく秋らしい冷え込みがやってきました。門から続く石畳の横に梅の老木がありますが、紅葉が真っ盛りです。日々いただくミカンや柿にも秋を実感しています。
大根がたくさん出回るようになり、前回は風呂吹き大根を肉味噌でいただきました。今回は葉の付いた大根をご近所からいただきましたのでそれを使った簡単なアテです。その大根は朝、畑から抜いたばかりのようで、上にシャキッと延びる真っすぐな茎に付く葉は力強く鮮やかな緑色。これを使わない手はありません。一本分は塩をして昆布と共に漬物に、もう一本はじゃこと炒めて酒のアテにすることにしました。
主役の酒
清酒 大和郡山 中谷 (2024BY10本目の酒)
11月4日に仕込んだもろみが搾れました。7月に始まった今醸造年度10本目の酒です。淡い濁りと炭酸ガスが含まれているのはいつもと同じですが、気温が下がって蒸した米の冷却が速いのが原因か、この酒はやや香りが高めです。
アテ
大根の葉とじゃこの炒め物
大根の葉は、さっと湯通しして1センチ幅に切ります。ぎゅっと握って水気を大雑把に切り、ごま油を敷いたフライパンに投入。2分ほど炒めて水気がある程度飛んだところでちりめんじゃこを適量投入。色目として赤唐辛子の輪切りも散らします。2分ほど炒めてじゃこが葉の水気と馴染んだところに大匙一杯くらいの醤油を入れ、醤油の水気が飛ぶまで約2分炒めれば出来上がり。フライパンの上で冷ますと更に水気が飛んでくれます。
晩酌のアテとしてはこれだけでは寂しいので、身欠き鰊(にしん)の焼物(今宵の晩餐 vol.6)も用意しました。
晩餐
今宵も家内と一緒に晩酌(ばんしゃく)です。
小皿に盛った炒め物からはごま油の香りが漂います。先ずは一杯。軽やかな吟醸香(ぎんじょうか)が鼻に抜け、淡い澱を含んだ酒が優しく口中に拡がります。発酵中に生じた炭酸ガスの刺激は少しだけ。爽やかさの方が勝っています。旨い酒です。そして大根の葉を箸に乗るだけ載せて口に含めば葉の茎の部分の歯ごたえ。鮮度の高さを実感します。噛めばじゃこから出た出汁に醤油とごま油が混じり合った旨みが葉にも入り込んでいます。旨い!
酒をゴクリ。そして大根の葉。こんなに簡単に作れて、経済的でしかも旨い。徳をした気分です。そしてもう一口の酒。皆様も是非お試しあれ。今宵も満足です。
ではまた次回。