皆さん、こんばんは。六代目当主の中谷正人です。
連載の二十二回目。家飲みの楽しみを分かち合いましょう。
東大寺二月堂のお水取り行事が終わりました。桜の開花を間近にひかえたこの頃、ちょっと寒波が入り込む日もあるのですが、日射しは春を実感させてくれます。
先月は多忙にかまけて連載を休ませていただきましたが、晩酌はほぼ毎日続けてきました。日々のアテ兼おかずは単調になりがちですが、新生姜をみつけました。毎年ハウス栽培のものがこの時期に出回ります。それを酢漬けにして脇役に。そして主役は鶏肉の生姜醤油焼にしました。
主役の酒
清酒 奈良吟(ならぎん)純米吟醸
肌寒さの残る宵、燗酒を合わせることにしましょう。熟成した純米吟醸の奈良吟を選びました。米は中谷の水田も含む大和郡山市内で栽培された山田錦。圧搾直後に生のまま瓶詰めし、温シャワーで加熱殺菌、冷シャワーで冷却し、大正時代に建てられた土蔵の酒蔵で瓶熟成させたものです。
アテ
鶏の生姜醤油焼
先ずは脇役の新生姜の酢漬を作ります。輪切りスライスした生姜を甘酢に漬けて一日おけば生姜がほんのりと赤みを持ちます。それで完成。酢に加える砂糖の量はお好み次第。
鶏のモモ肉一枚を買います。皮を下にしてパックされていますので、その上から土生姜を摺りおろし、醤油を掛けて適当に馴染ませ30分ほど置きます。これで準備完了。
普段は魚を焼くガスオーブンに皮を上にして入れ9分焼くのみ。タイマーをセットしておいて火が止まってから2分ほど取り出さずにおくと予熱で中まで完全に火が通ります。皮がこんがり、身は柔らかく仕上がっています。
晩餐
今宵も家内と一緒に晩酌(ばんしゃく)です。
先ずは燗酒を一杯。熟成感のある柔らかさを楽しみます。そして鶏一切れを一口で。なんと優しい味わい。見た目は醤油の味が中に沁みているようですが、表面だけ。緩い塩気と焦げた醤油の風味で鶏の旨みをゆっくり味わえます。そして酒。鶏の優しい旨みが残る口の中に吟醸酒の優しさが広がります。ダブルの優しさが旨い!
新生姜を一切れ。辛味は少なく新鮮さを感じさせる生姜の風味。そして酒。酢を含んだ生姜の余韻が酒の暖かさに包まれ消えていきます。そして鶏肉。噛んで味わった後、酒をゴクリ。旨い! 今宵も満足です。
ではまた次回。