皆さん、こんばんは。六代目当主の中谷正人です。
連載の十九回目。家飲みの楽しみを分かち合いましょう。
晴れ渡る空。深まる秋。刈り取りを終えた水田では切り株から緑の葉が伸びています。朝夕の気温が下がり紅葉も始まりました。秋の楽しみといえば、ブドウ、柿、みかん、それに秋刀魚(さんま)。
近年不漁が続き、昔のような太った秋刀魚が手に入りづらくなりました。10月下旬に「これが今季最後」と魚屋さんに言われたとかで家内は秋刀魚を買ってくれました。出張から戻った翌日の夕食でいただきました。
主役の酒
清酒 萬穣(ばんじょう)大吟醸
ちょっと贅沢に大吟醸に燗を付けていただくことにしました。昔は吟醸系の酒に燗はご法度のような風潮がありましたが、旨い酒はどの温度でも旨いものです。前回と同じ精米歩合35%の大吟醸です。
アテ
秋刀魚の塩焼き
中ぐらいの大きさで太り具合も合格水準。粗塩をまぶすように塗ってオーブンに入れます。7分目くらいから皮が焼けて油が出る音がします。9分で焼き上がり。
焦げ目も、油の出具合も上出来です。定番の大根おろしに加えてスダチを添えました。よだれが出そうなほど食欲をそそります。
晩餐
今宵も家内と一緒に晩酌(ばんしゃく)です。
大根おろしに加え、秋刀魚にも醤油をさっと掛けます。醤油は魚の甘さを引き出してくれます。続けてスダチを搾ります。柑橘の香りが爽やかに食卓に広がり、魚を焼いた空気を一気に浄化してくれるようです。
側線に沿って身を割り、内臓に箸を付けます。身から滲み出た油の混じった内臓は、秋刀魚ならではの楽しみ。すかさず酒を一杯。ちょっと温めに燗を付けましたので、内臓の苦みと混じりあった複雑な旨味が口いっぱいに拡がります。旨い!
単独で燗酒を飲みます。吟醸の風味をまとった酒は夏のそよ風のように喉を通り抜け、胃に落ちていきます。実に爽やか。
次は身の部分。先ずは内臓側から。小骨を取り去りちょっと大きめの一片に大根おろしを乗せて頬張ります。旨い!油が乗った身は香ばしく旨みが詰まっています。そして酒。やはり旨い!
秋は美味しい季節。今宵も満足です。
ではまた次回。