皆さん、こんばんは。六代目当主の中谷正人です。
連載の十二回目。家飲みの楽しみを分かち合いましょう。
3月6日は啓蟄(けいちつ)。太陽が明るさを増し、虫も活発に動き始めます。
「東大寺二月堂のお水取りが終わったら春」と言うように14日までは寒波の覚悟が必要ですが心は既に春。なぜか焼き鳥が頭に浮かびました。
家庭で作るには焼き鳥はハードルが高いので、フライパンでできる蒸し焼きを今宵の主役に致しましょう。
主役の酒
清酒 奈良吟(ならぎん)純米吟醸
今回は米作りから一貫造りの奈良吟を選びました。米は中谷の水田も含む大和郡山市内で栽培された山田錦。圧搾直後に生のまま瓶詰めし、温シャワーで加熱殺菌、冷シャワーで冷却し、大正時代に建てられた土蔵の酒蔵で瓶熟成させたものです。
アテ
鶏モモ肉の蒸し焼き
モモ肉は筋肉質で歯ごたえと肉の旨みがあり、皮のゼラチン質も楽しめます。酒のアテにはもってこい。アクセントに白菜の和え物を添えます。
塩と多めの粉山椒を摺り込んだモモ肉をフライパンで焼きます。先ず皮側を2分。皮から出た油がフライパンに拡がったところで身側を1分。裏返して皮を下にしてフライパンに蓋。とろ火で10分蒸し焼きにします。
添える白菜の調理。葉の部分は適当な大きさに切り、白い部分は細切りにして熱が通りやすくします。熱湯に放り込んで10秒。ザルに取ってさっと水を掛け、手で搾り水気を切ります。ボールに移して酢醤油で和えるだけ。私は豆板醤を少し加えましたが、ポン酢でも、麺つゆでもお好み次第です。
晩餐
今宵も家内と一緒に晩酌(ばんしゃく)です。
奈良吟を一口。強すぎない吟醸香(ぎんじょうか)と酒の旨み、軽やかな甘みが口に拡がり、スッと消えていきます。旨い酒です。そしてモモ肉を一口。引き締まった肉を噛めば噛むほど味がにじみ出ます。そして酒。口の中で肉の味と交じり合い、飲み込むと口の中は爽やかです。酒をもう一口。そしてモモ肉の皮の部分。すっかり油が落ちてゼラチン質になった皮は適度な塩味でこれまた満足。そして酒。
白菜に手を付けます。短時間の加熱ですから歯ごたえが残ります。これも酒のアテになっています。シャリシャリというかコリコリというか、そして酒をゴクリ。酒は空気に触れたせいか少し味に深みが出てきました。干しぶどうを思わせる深いフルーツ感があります。土蔵の酒蔵での熟成成果です。そしてモモ肉。今宵も満足です。
ではまた次回。