今宵の晩餐 vol.11 酢ゴボウ

投稿日:2023年2月07日

 皆さん、こんばんは。六代目当主の中谷正人です。

 連載の十一回目。家飲みの楽しみを分かち合いましょう。
 

 2月3日は節分。4日は立春。暦の上でも春がやってきました。

 明治時代に新暦が使われ始めるまで、庶民は立春を正月として祝いました。節分は大晦日ですので「年越しイワシ」と呼ばれる大振りな塩鰯を焼いて食べました。夜、鬼が入ってこないように棘のある柊(ひいらぎ)の小枝に鰯の頭を通したものを門口に挿し、豆撒きをしました。数え年で新年到来と共に年を取りますから年齢より一つ多い豆を食べました。立春からは節が分かれて春。御節(おせち)料理を食べました。

 前回はおせち料理の定番・棒鱈(ぼうだら)でしたが、今回は酢ゴボウ。今宵の主役です。

主役の酒

清酒 萬穣(ばんじょう)大吟醸

 今回も贅沢な酒。精米歩合35%の大吟醸です。燗は熱すぎると吟醸香が飛びますので、適度な燗をつけました。吟醸の甘く優しい風味が味わえる上に体が温まります。

アテ

酢ゴボウ

 主役がゴボウと知って、期待値が下がった方もおられるかもしれませんが、お付き合い下さい。食生活が豊かになり、家庭ではおせち料理以外で食べることはあまりないかもしれませんが、実に手間いらずで酒のアテになるのです。根菜ですから栄養は豊富。食物繊維も取れます。お試しあれ。

 先ずは鍋を火にかけて湯を沸かします。その間にタワシでゴシゴシとゴボウの皮をこそげ落とします。皮は多少残っていたほうが風味が高まります。約6センチに切りそろえ、太いところは6つ割り、細いところは4つ割りにします。 湯が煮立ったところに若干の酢を入れ、ゴボウを3分間茹でます。ザルに取って適度に塩を振り、冷めたところで酢醤油を絡めます。小鉢に盛り付け、真ん中に擦りゴマと、たっぷりの鰹の削り節を載せて完成。

晩餐

 今宵も家内と一緒に晩酌(ばんしゃく)です。

 大吟醸の燗酒で口の中が幸福感に満たされたところでゴボウを一口。コリコリと歯ごたえがたまりません。ゴボウの風味がしっかりと感じられます。ゴマのおかげで味の幅が拡がり、鰹の削り節はその旨みで酒のアテらしさを加えてくれています。そして燗酒を一口。

 コリコリ、ゴクリ。コリコリ、ゴクリ。酒がすすみます。因みに今宵はこれ以外に鰤(ぶり)の塩焼きがありましたが、あくまでも主役は酢ゴボウ。今宵も満足です。

ではまた次回。