皆さん、こんばんは。六代目当主の中谷正人です。新連載の始まりです。私も皆様同様、コロナ禍の中、家飲みに徹しています。まだ肌寒い早春。今宵は、燗酒で一杯と行きましょう。
主役の酒
清酒 萬穣(ばんじょう)本醸造
本醸造酒は、タンク熟成の原酒を澱下げ・濾過の後に瓶詰しますが、円やかさを増すために少し吟醸系統の酒を加えます。今回のロットは精米歩合50%の純米吟醸酒をブレンドしています。
アテ
ホタルイカと青柳、アジの造りと蕪(かぶ)の甘酢漬
今が旬のホタルイカ。雪解け水に含まれる栄養素が海に流れ込み、プランクトンが増え、それを食べてホタルイカが育ちます。青柳も春を象徴する貝です。
奈良盆地は大阪市場から約20kmと近く、新鮮な魚が食べられます。我が家は奈良県中央卸売市場から1km余り。トラックで山間集落に売りに行く魚屋さんが市場で仕入れた後、週に一度真っ先に立ち寄ってくれます。
晩餐
家内と一緒に晩酌(ばんしゃく)。晩酌という言葉はあまり使われなくなりましたが、夕食時に酒をいただくことです。
本醸造酒は燗酒がベスト。50℃くらいの温度にしました。
先ずはホタルイカを自家製酢味噌で。酢味噌の酢と砂糖は控えめです。噛んだ時に内蔵からほとばしるジューシーさは来月の最盛期まで待たなければなりませんが、噛むほどに甘みが感じられます。本醸造は円やか。口の中でイカの甘みと混じり合い旨味を高めてくれます。
続いて青柳。内臓のやや癖のある味は人によって好き好きですが、燗酒と出会って旨味に変わります。しっかりした歯ごたえも嬉しいものです。
箸休めに蕪の甘酢漬。薄切りの蕪を塩もみした後、昆布を入れた甘酢に漬け一日置いたものです。酢に触れて蕪はやや赤みが出ています。酸味のあるものは酒を甘く感じさせてくれます。純米吟醸酒ブレンド効果が出ています。蕪は少し辛味が残っており燗酒と共に体温が上がっているのが解ります。
最後にアジの造り。生姜醤油でいただきます。アジの身は噛むほどに粘りを感じます。酒の酸と甘味、旨味と交じり合い燗酒の良さを再認識できました。幸せなひと時を過ごせました。
ではまた次回。