第33話 つくられる常識

投稿日:2013年3月08日

 「実は、昔の酪農と現代の酪農では大きく異なることがあります。それは妊娠している乳牛からも搾乳するようになったことです。(中略)妊娠している乳牛の何が問題かというと、搾乳された牛乳に、大量の女性ホルモンが含まれていることです。(中略)女性ホルモンはアレルギー反応を強める作用があります。」

若杉友子著「長生きしたけりゃ肉は食べるな」(幻冬舎)より

1.ある日

若杉友子著「長生きしたけりゃ肉は食べるな」(幻冬舎)

 女房が読んだばかりの本の内容に興奮して、私に抜粋を読み聞かせてくれました。それが上記の部分です。

 私は長い間花粉症に悩んでいます。まだ花粉症という名前が一般に知られる前、1988年の春、銀座を歩いていて、突然くしゃみが止まらなくなりました。それが始まりです。

 東京でのサラリーマン生活を終え、空気のきれいな奈良に戻ってからもマスクどころか、ゴーグルまで使用するに到り、外出をためらうまでに追い込まれました。

 近年は鼻孔に塗る薬、鼻の周辺に塗る薬のダブル効果で体内に取り込む花粉量を減らすことで随分楽になりました。

 とは言え、ここ数年、花粉症に苦しむ期間が延び、今年などは1月下旬から始まってしまいました。1月下旬から5月下旬まで四ヶ月。一年の三分の一が苦痛の日々となってしまいます。

2.ヨーグルト

 10年以上も前になりますが、花粉症に苦しむ私を見かねて女房がヨーグルトを勧めてくれました。ヨーグルトを飲んで花粉症が治ったとか、そんな民間療法が広まっていたのでした。

 ウコンも効くと言われ、一年ほど飲んでみましたが全く効果を実感できません。蕗(ふき)も毎日食べましたが効果なし。ヨーグルトも同様でした。

 ただ、ヨーグルトは腸の働きを良くし、免疫力を高めると言われていましたので、花粉症とは関係なしに毎朝ずっと摂取してきました。

3.若杉さんの著書

 おおざっぱに読んだところ、清酒、酒粕、麹、味噌、醤油など、日本の伝統的な発酵食品に対する認識があまりないようですが、概ね納得できる内容でした。

 牛乳の女性ホルモンについては気になりましたので、NET検索で調べてみました。やはり女性ホルモンが高濃度で含まれていること、学校給食に牛乳が取り入れられた時期からアレルギー患者が増えていること、乳製品摂取量の増加とアレルギー患者数が関連しているらしいことがわかりました。

 又、女性ホルモンは細胞性免疫を抑制して感染症に対する抵抗力を低下させるそうです。

4.断ヨーグルト

 毎年、腹痛と下痢から花粉が飛び始めたことを知ります。心理状態が不安定になり、くしゃみ、鼻水、そして肌が炎症で赤くなります。時として心臓への圧迫感も加わります。

 2月11日、毎朝欠かさず飲んでいたヨーグルトをやめました。その日は一度も下痢が起きません。夜中の腹痛もなく、ぐっすり眠れました。心は安定し、肌荒れも収まってきたようです。

 近年急速に衰えてきた視力も急回復です。テレビを見るには1メートルに近づいて老眼鏡を掛けていたのですが、2メートルの距離から裸眼で見るまでになりました。追随した女房も花粉症が楽になったと喜んでいます。

 私は牛乳は消化できないので飲みませんし、アイスクリームや洋菓子はもちろん、甘い物はほとんど食べません。クリームシチューやグラタンなど牛乳が入ったものは嫌いです。コーヒーのミルクさえ使いません。

 乳製品で食べるのはわずかばかりのチーズだけです。即ち、ヨーグルトをやめれば乳製品の摂取をほぼやめたことになります。朝は味噌汁と米飯に始まる魚と野菜中心の食生活。間食は採らず、食中酒は主として清酒。これはそのままです。

 どうもヨーグルトに含まれる女性ホルモンが悪さをしていたようです。

 やめて2週間。二年前から荒れていた足の裏がツルツルに。3週間で頭髪の生え際が黒くなってきたのを発見しました。肩こりまでどこへやら。

 そう言えば若杉さんは、牛乳はカルシウムを補充するどころか、大量に含まれるリンによって体からカルシウムを奪うとも書いておられます。視力低下、肩こり、皮膚が弱ると言えばカルシウム不足の症状です。私には乳製品は合わないようです。

5.風潮

日本経済新聞2月17日SUNDAY NIKKEI「免疫力って何?」

 牛乳は体に良い、とりわけヨーグルトは良いと喧伝されています。私はヨーグルトによって悪いことが起きることなど想像だにしていませんでした。

 ヨーグルトをやめて6日目、2月17日の日本経済新聞記事・SUNDAY NIKKEI「免疫力って何?」にも「ヨーグルトは免疫力に関係する腸内細菌を増やす」、「ヨーグルトを食べ続けると、インフルに感染しにくくなるという研究結果がある」と書かれています。

 その研究結果の是非は問いませんが、「食べ続ける」ということが問題です。若杉さんは日本人が昔から食べ続けてきたものについては、魚の干物など多少の例外を除いて肯定的です。

 私が考えるに、新しく入って来た食物については「食べ続ける」のではなく、偏りなく色々な物をバランス良く食べるのが良いようです。

 最後に同記事に書かれている面白い一節を引用しましょう。

 「血圧やコレステロール値が高かった40代の男性約1200人を半分に分け、1974年から15年間追跡した。片方は最初の5年間はまじめに健康管理し、喫煙や飲酒、塩分、糖分の摂取を控え、定期的に健康診断を受けた。もう一方は何もしないまま過ごした。

 まじめに健康管理したグループの方が血圧などは改善したものの、なぜか15年間の死亡者総数では多かった。『健康的とはいえ、窮屈な生活がストレスになり、免疫力を下げた可能性がある』と順天堂大学の奥村康・名誉教授はみる。

 最初の5年間とはいえ、ストレスによるダメージは大きいようだ。」

第33話終わり

写真1:若杉友子著「長生きしたけりゃ肉は食べるな」(幻冬舎)
写真2:日本経済新聞2月17日SUNDAY NIKKEI「免疫力って何?」