COP(Conference of Parties)は、国連気候変動枠組条約(UNFCC)を受けて設置された会議で、年に一度、各国の環境に関わる省庁の大臣が集まり温暖化対策について話し合います。
第三回(COP3)は1997年に京都で開かれ、温室効果ガスを二酸化炭素として、その排出量の削減に向けて各国に具体的な取り組みを課した「京都議定書」を採択しました。
2009年はCOP15。12月下旬、デンマークの首都コペンハーゲンで開かれました。
「もし世界が、京都議定書後の新たな条約を決定したいと願うのであれば、2009年が最後のチャンスです。
人為的に作り出された温室効果ガスによる気候への影響を最小限にとどめ、未来の世代へと受け継ぐためにも、地球規模の気候変動対策が必要なのです。」(デンマーク大使館HPより)
結果は、皆さんご存じの通り空しいものに終わりました。その理由に迫ります。
1.温室効果と水蒸気
「日本人は環境問題になぜだまされるのか」(PHP新書)という過激な題名の本が目にとまり一読しました。著者は工学博士(東京大学)武田邦彦氏です。
太陽から地球に届く光を100とすれば、30が大気に反射されて届かず、23が大気に吸収され、地表には47届きます。届いた47の内、30は水の蒸発や伝熱で大気に吸収され、6は宇宙へ放射、地表を暖める光は残る11です。
地表を暖めた熱は大気に吸収されて地表の温度バランスが取れます。武田氏は、大気の温室効果によってこの熱が地表に留められるとしても、温室効果をもたらすのは二酸化炭素の25倍もある水蒸気が主なもので、二酸化炭素の関わる比率は極めて小さいことを指摘しています。
2.気温と二酸化炭素
空気中の二酸化炭素の増加と気温上昇に相関関係はあるのでしょうか。同著の中で武田氏は、東北大学大学院理学研究科大気海洋変動観測研究センターが行った南極の氷床コアの分析を示しています。
それは現在同様二酸化炭素濃度が300ppm程度に上がった34万年前、25万年前、13万年前にも気温が高かったということです。その理由は、「CO2の多くは海水に溶けていて、海水温が上がるとCO2の溶解度が下がって空気中に出てきますから、「気温が上がったから大気中のCO2が増えた」という結論は理にかなっています」。
そして気温が上がる原因として、太陽活動と気温が連動していることを示しています。
以上をまとめますと、太陽活動が活発になると地上に届く光が増えて気温が上がり、その結果海水中に溶けていた二酸化炭素が大気中に放出され、空気中の二酸化炭素が増えるということになります。
3.温暖化していない
武田氏によると、地球の気温が上がっているというデータはないそうです。百年、或いは数十年といった長期にわたって継続して気温観測をしている場所は、ほとんど都市気候の影響を受けており、地球温暖化の判断には使えません。
数少ない都市化されていない観測点では気温はほとんど変化していません。
要するに我々は、都市もしくは都市近郊に集中して住み、冬の暖房と夏の冷房、自動車の使用などで大量の熱を放出しており、それが局地的な気温を高め、「地球温暖化」を実感しているという訳です。
NHKはじめマスコミは、南極大陸周縁部の氷が溶ける映像を流して南極の気温が上がっているというイメージを作り出していますが、NASA(アメリカ航空宇宙局)の1960年から2000年のデータでは上下を繰り返しながら徐々に気温が下がっていることを示しています。
即ち、地球の気温が上がっている証拠はなく、そもそも我々が排出する二酸化炭素と地球の気温の関係を論ずる前提がないということです。
4.暴かれた事実
田中宇の「国際ニュース解説」は、主たるマスコミ関係者はもちろん、多くの知識人が読むことで知られています。無料版2009年12月2日には次のように書かれています。
「11月18日、英国のイーストアングリア大学にある「気候研究所」(CRU)のサーバーがハッキングされ、1000通以上の電子メールや、プログラムのスクリプトなど電子文書類が、何者かによってネット上に公開された。
その公開されたメールやデータを分析することにより、CRUなどの研究者たちが、温暖化人為説を根拠づけるため、さまざまな歪曲や論敵つぶしを展開してきたことが明らかになりつつある。
データを暴露されたCRUは、英国で最も重視されている気候学の研究所で、英国気象庁の気候変動研究の多くを請け負い、世界各地の気温を測定・収集して平均気温を算出する世界の4つの研究所の一つである。
CRUは、フィル・ジョーンズ所長(Phil Jones)やキース・ブリファ副所長(Keith Briffa)を筆頭に「人類が排出した二酸化炭素などによって地球は急速に温暖化している」という「人為温暖化説」を強く主張し「地球温暖化問題」を主導してきた国連の気候変動パネル(IPCC)を主導してきた。(中略)CRUの問題のメールに書かれている「トリック」とは、このネイチャー論文に書かれた、指標値を実測値を置き換えることで、指標値の低下傾向を消すことを意味している。
木の年輪を使った指標値の気温は、北半球で、1960年代以降、寒冷化の傾向を示している。そのままでは地球温暖化の仮説を立証できないので、60代以降の分については実測値を使ってグラフを接ぎ木することで、地球が温暖化していることを示すグラフが作られた。(中略)
処理の内容は、1904年から94年(データの最終年)までを5年区切りにして、その20個の各年の温度変化に対し、個別に数字(温度)を加算し、現在に近づくほど加算値を大きくしている。つまり、現在に近づくほど気温が上がったように、結果を歪曲している。
1904-24年は加算なし、29-49年は若干の減算を行い、その後は再び加算に転じ、79年以降は2.6度(後で0.75を乗じているので実質1.95度)ずつ加算している。
これは要するに、すでに指摘した1940年代の高温時期の山をなだらかにして今より気温が高い状態でなくすとともに、60年代から80年代以降にかけて温度が急上昇したように見えるグラフを作るための操作である。
プログラムの作者自身が「非常に人為的(不自然)な補正」と注釈していることからも、温暖化人為説の証拠作りのため、データを歪曲したことがうかがえる。」
5.冷静な分析
1997年の京都議定書では、1990年を二酸化炭素の排出基準としましたので、それまでに既に省エネ化を遂げた日本は19%の削減義務を負いましたが、1990年以降に省エネ化を進めたEUは、削減ではなく増加が認められたことになりました。
前著の武田氏作成の表によりますと、英国は5%、ドイツは11%です。ロシアは、38%もの増加が認められましたので、2004年に批准しました。
一方、22%の削減が求められた米国は批准していませんし、25%の削減が求められたカナダは目標達成を断念しました。実質的に二酸化炭素削減義務を負うのは日本だけなのだそうです。
日本では温暖化問題は「環境を守るため」ですが、欧州では「政治問題」と認識していることを武田氏は指摘しています。先進国では日本だけに削減の為の重いコストを負担させる。
中国、インドなどの新興国、発展途上国ではこれから一人当たりの二酸化炭素排出量が増えますので、枠組みを設けることでその成長を阻害する。そういった政治的な意図があるというのです。
田中宇氏も上記「国際ニュース解説」の中で、「欧米日のマスコミが、この件をほとんど報じていないのも異様で、地球温暖化問題が科学ではなく政治的プロパガンダであることを感じさせる」としています。
6.日本政府の隠された意図
ハイブリッドカーが売れています。ハイブリッドカーは従来のガソリン車に比べて燃費効率が良いのは理解できます。しかし通常のガソリンエンジンに加えて電動モーターとバッテリーが必要です。
これらを製造し、寿命が来てから廃棄するエネルギーコストを加えて計算すれば、二酸化炭素排出量にせよ、環境負荷にせよ、従来のガソリン車を超えるメリットはなさそうです。
電気自動車もそうです。電気の6割は二酸化炭素を排出する火力発電で得られ、その発電効率は40%に過ぎず、その上送電ロスが5%あります。更にクルマに重いバッテリーを積んでエネルギー効率が良いはずがありません。とりわけバッテリーの廃棄は環境負荷が高そうです。
しかし、ハイブリッドカーは爆発的に売れ始めました。エネルギーコストとは関係なく、ガソリン使用量は減ります。ガソリンは原油から作りますので乱高下する原油相場の影響を抑えることができます。
日本の火力発電の燃料もほぼ100%海外に依存しています。省エネ家電の普及は燃料消費を減らします。その上、省エネ技術は新たなビジネスチャンスを生みます。日本政府の真意はこのあたりにありそうです。
日本政府の意図通りに二酸化炭素排出量を抑えるとすると、鉄鋼など二酸化炭素排出量の多い素材産業は海外に移転しなければなりません。日本の産業構造を転換させるこのような重大問題は、正しい情報を国民に与えて、国民の議論を経てから決めてもらいたいものです。
終わり
写真上:都市気候にうだる獅子(南京駅)
写真下:雪を眺める猫(中谷家)