中国の大都市を一見された方は、高層ビル群、高速道路、地下鉄、百貨店、巨大なショッピングモールなど、あまりの発展ぶりに驚かれることでしょう。
一方で、街に足を踏み入れると、ゴミの散らばった路地、出稼労働者や物乞いと言った発展途上国の顔にも気付かれるはずです。そんな中に、外観からはうかがい知れない内面の変化も浮かんできます。
1.流行
10年の時間差を伴って米国の流行が日本に伝わると言います。同様に日本の流行は、東南アジア、或いは中国に流れて行きます。日本の流行を中国で発見すると、その時間差の短さに驚かされることがあります。とりわけ発展の著しい上海や広東省では顕著です。
例えば、カラオケバー。広東省は深せん(せん:土偏に川)の街頭で配っていたカードには、「○○国際倶楽部 特別推薦 俄羅斯小姐(ロシア娘)、学生妹(女子高生)、処女見紅」。この「紅」だけは赤で印刷されています。
裏には写真付きで「白領文秘(OL)、多情少婦(多情な若妻)、純情少女、模特(モデル)、妙齢処女」などが並びます。全て漢字で書かれていますので、対象顧客は地元の人々です。遊び慣れた方にはピンとくることでしょう、これらは全く日本のノリです。
よく見ると、「学生妹」は日本のセーラー服姿、写真の女性は何れも日本の歌手やタレントのようです。
中国は処女信仰の強いところです。OLやロシア娘はともかくとして、「多情な若妻」を宣伝文句に使うのは驚きです。社会主義市場経済の進展は、ここまで価値観の多様性を認める社会に発展しているのです。
2.そう言えば
広東省で配布される日本語の都市情報誌の広告にも
「遂に現る!本格的コスプレカラオケ!あなたの夢がここに再現!!7種類のレインボーコスチュームに身を包んだ女の子達が、皆様のご来店をお待ちしております。 ナース、スッチー、OL、学生服、浴衣、ミニスカポリス、メイド」というのがありました。
こういう店まで営業を許される時代になっています。
もし本当に「遂に現る!」で、最近までこの種の店がなかったとすれば、却って中国の日本人社会が流行から取り残されている、そんな感さえあります。
3.たまたま
泊まったホテルの窓から広州体育学院のグラウンドが見下ろせました。専用のトラックは赤い舗装にコースラインが引かれ、トラックの中は芝生。走り幅跳び用の砂地もあります。
15人ずつ位の班に分かれて、準備体操、棒高跳び、砲丸投げなどを行っています。恵まれた設備は予算次第ですが、トラックを走るのに整列するでもなく大ざっぱに一団を成していたり、揃わない準備体操や思い思いの自由な体操服に、かつての計画経済社会の面影はありません。
私は、宗教色の薄い寺が経営する自由な気風の高校で学びましたが、実にその雰囲気を感じ取りました。
4.よく見れば
中国と深く関われば関わる程、その「発展途上ぶり」に目が行くはずです。それは真実かもしれませんが、日本の優位を確認したい願望の裏返しも含まれていることでしょう。
ところがどっこい、変わっているのです。外観からは窺い知れない部分、これは大きく「民度」と一括りにできるかもしれません。それは着実に高まり、中国という「偉大な民」の押さえようもない力が溢れていく情況が実感できるはずです。
そんな視点で眺めてみれば、あなたの身近にも新しい発見があるに違いありません。
つづく
写真上:カラオケクラブの勧誘カード
写真下:体育学院のグラウンド