昨年11月、内閣府経済社会総合研究所の国際フォーラムを拝聴する機会を得ました。テーマは、「中国は高度成長を続けることができるのか」。作家・堺屋太一氏が内閣特別顧問として基調講演をされました。
「中国の人口は、歴史的に見れば常に世界人口の3分の1から5分の1程度、現在は少ない時期にあたる」そうです。スタートから「!」。さらに驚くべき分析が・・・。
1.80年代以降
不動と思われた米国、欧州、日本の経済的地位。そこに新たな動きが始まりました。アジアNIESの工業化です。この工業化の流れはやがてアセアン諸国、そして中国へ。
そして経済的地位に変動が起こり始めました。その背景には、3つの要因があったそうです。
その1:資金
かつて日本では貯蓄を奨励しました。今では考えられないかもしれませんが、子供の頃、正月の年玉まで郵便貯金になりました。そんな風に国民から集められた資金が日本の産業産成長を支えました。
それが、経済のグローバル化で資金は投資先を求めて地球を駆けめぐります。発展途上国にも資金が供給されるようになりました。
その2:コンピュータ技術の進歩
明治以来、政府は義務教育の普及、中等・高等教育に力を入れて来ました。その蓄積により技術者、管理職という産業界に必要不可欠な人材を供給することができました。
ところが、コンピュータ技術の進歩で、NC旋盤が中堅技術者の代わりに精密な加工をしてくれます。
しかも多品種少量生産も可能になりました。OA化により中間管理職なしで工場を運営できるようになりました。教育水準格差を埋めることができたのです。
その3:米国に於ける知価社会の成立
氏は、85年にその著書「知価革命」で「知恵の値打ちが経済の成長と企業利益の主要な源泉になる社会」の到来を指摘されました。
米国では、ベトナム敗戦、二度のオイルショックメA環境問題の高まり、基幹産業の衰退、レーガノミクスを経て、規格大量生産の工業克ミ会から、情報・通信、映像、医療、法務などのサービス産業が経済の新たな担い手となる「知価社会」が成立しつつありました。
これにより、規格大量生産といった産業革命以来続く従来型の産業を他の国・地域に譲ることが可能になっていたそうです。
2.その間
資金は、有利な投資先を求めて自由に移動できます。製造業なら最適な工場立地を求めます。
中国は、その波に乗っています。かつて一人勝ちした日本工業も猛追を受けています。一方の日本は知価社会への移行期と見ることができるでしょう。
3.10年後の中国
米国・日本・新興工業国・中国の順で雁行型で推移するのか、そんな序列は飛び越して発展するのか、或いは一気に知価革命が起きるのか、氏はこのような課題を残されました。
阻害要因として、所得格差の拡大、水不足など資源・環境問題、一人っ子政策による人口構成の歪み等が指摘されています。皆さんはどうお考えになるでしょう。
4.隣りのお嬢さん
パネリストの一人は米国人、ネイティヴスピーカーの英語は早口です。私はところどころ聞き取れず翻訳音声を聞きましたが、私の隣りではイヤホンに手を触れようともしません。日本語は日本語で、英語は英語でメモを取っています。どう見ても二十歳過ぎ、研究者とか経済の専門家とも見えないので興味が募ります。
帰り際に「学生さんですか?」と尋ねると「新入社員です。」「優秀ですね。」せっかくですからと名刺を差し出すと、彼女も名刺をくれました。化粧気の薄い可愛らしい笑顔と言葉、服装、何れからもわかりませんでしたが、中国人。日本に既に8年、もうすぐ上海の事務所で働くそうです。
こんな人が増えて、ごろごろ働いて居るんでしょうね、中国では。このあたりに氏の課題を解く手懸かりがあるのかもしれません。
写真:堺屋氏と筆者(フジテレビスタジオにて)
つづく