ラーメンに半チャーハンと餃子の「満腹セット」、日本人があたりまえに食べるランチメニューも、中国人からすればそれらは全て主食。おかずなしで済ませる日本人に、来日中国人は驚愕を隠せません。今回は、日本人の中華料理の概念に挑戦です。
1.近所の店
数年前、我が家の近くに飲茶(ヤムチャ)を楽しめる中華料理店ができました。元は屋台のラーメン屋さん、屋台系ですから味は濃く塩辛いラーメンですが、かえってそれが受け、行列ができる程繁盛するようになりました。
その店、一階はラーメン店、二階は広東省から料理人を招き、本場の点心を提供することにしたのです。種類も豊富で価格も手ごろ、家族で行くも良し、取引先や友人と行くも良し、非常に重宝していました。
2.「まるで香港!」
とか言いながら点心を楽しみ、やがて料理が運ばれ紹興酒で盛り上がります。ふと、回りを見回すと、ラーメンと焼き餃子を食べる家族連れで埋まっており、売り物の点心はどこへやら。本場の点心の需要は必ずしも多くはなかったのです。
今では、数種類の蒸し餃子とシュウマイだけになってしまいました。
3.或る会社の宴会で
幹事さんは、中華料理店でアルバイトをしたこともあり、張り切ってアレンジしました。
前菜にクラゲの和え物とピータン。
「何だこれ!」「臭っせー!」「アヒルの卵?腐ってんの?」
多くの人はピータンを食べたことがありません。
次は、鶏肉のカシューナッツ炒め。質の高いナッツがカリカリとしてなかなかの味わい。しかし「量が少ない」とクレーム。量のある鶏の唐揚げが無難だったようです。
ビールの後は紹興酒、年代物の老酒です。
「何、この酒」「変なにおい、オレ要らない」
結局、価値の解る人3人だけが堪能することになりました。
エビチリソースは問題なく消化。その他の料理が終わって、メインディッシュは鯉の姿揚げ。目にもうれしい五色のあんを掛けた豪勢な一品。多くの人は見たことも食べたこともないようで、箸を付けません。
がっくり来た幹事さんへの追い打ちは、主食のチャーハンに加えて、焼きそばと餃子の要求。おまけに一言。
「お前には二度と幹事は任せられねえな」
4.無難な選択
エビチリソース以外には麻婆豆腐、八宝菜、回鍋肉(キャベツと豚肉の味噌炒め)、青椒肉糸(細切りピーマンと肉炒め)、木須肉(卵と豚肉とキクラゲの炒め物)あたりが無難だったようです。当然主食は焼き餃子、チャーハン、五目焼きそばに落ち着きます。
その後、その会社は中国に合弁会社を立ち上げました。多くの人々がそのプロジェクトに携わり、出張や駐在を経験されたそうです。5年経った現在、日本での中華料理の宴会で何を食べるようになったか、大いに興味があるところです。
つづく