日本で最も身近なギャンブルといえばパチンコ。パチンコ屋は、繁華街、 駅前、道路沿いなど至る所にあります。
更に、ギャンブルと言えば競馬、競輪、オートレース、競艇など。私が市川に住んでいた時、我が子の幼稚園の遠足は中山競馬場でした。
地域性もあるかもしれませんが(注)、それ程ギャンブルは庶民の生活に密着しています。
一方、中国は社会主義国の常識として、資本主義の堕落した産物である競馬や賭博は禁じています。しかし、社会が豊かになるにつれて庶民の欲求を満たす必要があります。
(注:例えば奈良では奈良公園に鹿を見に行ったりするのが一般的です。)
1.宝くじ
近年、宝くじやサッカーくじができ、売上を急速に伸ばしています。ワールドカップの影響で、後者が飛躍的な伸びを示したことは想像に難くありませんが、宝くじも負けてはいません。
2002年は前年比30%増のペースで、売上200億元(約三千億円)に迫る勢いです。くじ全体で見れば、日本で言うところの「一兆円産業」目前です。
2.麻雀
発祥の国が、後発の日本に負けるわけにはいきません。雀荘こそありませんが、盛んなことは論を待ちません。国有企業では就業時間中にも行われているそうで、その取り締まりが話題になっています。
3.伝統のトランプ
ところが如何せん、パチンコ屋がありません。私の推測では、どうもトランプがその役割を果たしているようです。
賭ける賭けないは別にして、トランプ遊び自体は革命後も広く庶民に普及しており、革命英雄の皆様の中にも愛好家が多いことが知られています。
トランプ遊びは場所を選ばないのが、パチンコに勝るメリットです。職場、公園、道ばた、駅、列車の中、タクシーの運転手はクルマの中など、頭数がそろえば始まります。人目が少ない場所ではしばしばお札が飛び交うのを目にします。
4.国内線待合室
使われていないショウケースが壁から引き離され、一団に取り囲まれています。
何れも四十代後半の「六人組」、三組の夫婦のようです。その内の二組がトランプゲームに興じ、残る一組が外野です。
カードは繰ったあと裏返して置き、一枚ずつ順に取っていきます。カードが行き渡ると残ったカードを親が処理します。中国で一番ポピュラーな「打百分」という4人が二組に別れて点数を競うゲームのようです。
親からスタートです。先ず同じマークのペアを投げます。順に同じように二枚ずつ出します。次は三枚、そろったものが無い場合は代わりのものを出します。次は一枚・・・。
「パチン!」興奮してきたおばはんが、カードをショウケースに叩きつけ ました。
「バーン!」相手のおっさんもガラスケースを手で叩いて負けじとカードを出します。続いて隣りのおばはんも・・・。生活が賭かっているかのようなド!迫力です。
ファイナルです。興奮は最高潮、結果が気にくわなかったのか外野のおばはんが大声で親を指さして叫んでいます。向かいのおっさんが顔を真っ赤にして叫び返します。隣りのおばはんはガラスを「バン」と平手で叩きます。
そんな情景を見慣れない、欧米系の人々や日本人らしきビジネスマンは、眉をひそめてその一角を遠巻きにしています。
一団は周りのことは全く眼中になく、大声で笑って、やがて普通の表情に戻ってカードを繰って再開です。暫くするとガラスを叩く音と怒声が響きわたり・・・、そんなことが延々と、私が搭乗口に向かった時も続いていました。
5.考えてみれば
この「六人組」、小中学生の時に文革が始まり、教育や道徳、家庭のしつけまで否定されて育った世代です。子供の頃のトランプ遊びを思い起こさせる熱中ぶりに、革命が精神の発達に与えた影響を感じずにはおられませんでした。
つづく