中国語でマッチのことは「火柴」と言います。戦前、北京に住んでいたことがある老日本人が、「昔は、「洋火」と言ってましたね」とおっしゃいました。「洋」とは西洋のことで、欧州から伝わった火という意味です。
又、辞書には「水泥」(セメント)は「洋灰」とも出ていますが、中国で実際にこれを使う人は、老人か田舎の人だけとのこと。言葉の変化についていくのも大変です。
1.冬の河北は極寒の地
郊外を車で走っていると、道ばたに氷を積み上げています。空の色を映して青くキラキラ輝いています。厚さは10センチ以上あるでしょう、池や沼に張った氷を切り出しているのです。
60センチ掛ける30センチくらいのブロックに切って、それを並べて積み上げ、4メートルくらいに積み上がったところで、藁で全体を覆います。外観は、藁でてきた倉庫のようです。暑くなったら取り出して販売します。主に瓶入りの飲料を冷やすのに使われます。
2.中国語で「冷えた」は
「氷鎮的」(bingzhende、ピンチェンタ)と言います。「氷鎮」の「鎮」は、「鎮火」「文鎮」のように、しずめるとか抑えるという意味ですが、この場合冷やすという意味です。「氷で冷やした」、即ち「冷えた」ということです。「的」は順接の接続詞です。
3.河北の夏
五月ともなると乾燥した熱波がやってきます。露天商や道ばたの商店では、氷の上に瓶を横にして並べます。しばらくすると瓶に触れている部分が溶け始めます。時々瓶をその上で回転させますと瓶の下がU字形に溶けて溝ができます。
売れたら次の瓶を載せて冷やします。まさしく「氷鎮」、十年ほど前までは、街の中や観光地でしばしば見られました。
4.通じない?
最近は冷蔵庫が普及したので「氷鎮」を街の中では見かけなくなりました。
ある時、若いウェイトレスに「「氷鎮的」ビールはありますか?」と尋ねると、
「はあ?」
「だから、「氷鎮的」ビールですよ。」
「はあ?何を言っているのかわかりません。」
といった情況が発生しています。
若い人は、「涼」とか「冷」という言葉を使うようです。因みに上海ではメニューに「氷凍」とあり、口語では「氷」、広東省では「凍」も使うようです。
緯度の低い地域では自然に氷はできませんから「氷鎮」という言葉自体使っていなかったのかもしれません。
ある時「落花生」が通じなくて困ったことがあります。指さすと、店員は「落」を取って「花生」と言いました。「落花生」はこのごろ使われないようです。
やっかいなことに殻をとったものを北京などでは「花生米」、天津では「果仁」と言うことを後日知りました。英語でピーナツは、殻が付こうが付くまいが、ニューヨークに行こうが、「PEANUT」ですが、中国では奥深いものがあります。
天津には「果仁張」という豆菓子の有名ブランドもあるそうです。ご興味のある方はこの話しでも思い出しながら、どうぞ召し上がれ。
つづく