多くの日本人が中国で暮らしています。又多くの日本人が旅に訪れます。その多様さが、時として新鮮に感じられ、視野を広げたり、自分の足元を見直す良い機会になっています。でも、こんなのはちょっといただけません。
1.非常識編
大阪からの私の便が到着する前に、名古屋からも到着したようです。入国審査場は団体旅行客で混んでいます。
先に審査を終えた中年女性の一団が、出たところで残りの人たちを待っています。何を思ったのか、その内の一人がビデオカメラを取り出し、入国審査場の撮影を始めたのです。
審査を待っている人の中に仲間がいるのでしょう、審査官の横顔越しに撮っています。たまたま公安の人はいません。審査官は審査に集中していますから気付きません。声を出して注意しようかとも思いましたが、かえって審査官の注意を引いてしまいます。
やっと、私の審査が終わりました。つかつかとその女性に向かい、
「こんなところを撮ったら身柄拘束されますよ!」
女性はにやにやして、「エッ、いけないんですかあ。」
2.不作法編
畳を敷いた小上がりがあります。そこのテーブルで比較的若い日本人男性が二人、焼酎を飲んでいます。平日の夕方、ラフな恰好で髪の毛も金色ですのでサラリーマンではなさそうです。
その店は、懐石料理も出す比較的高級な店です。私は椅子席で、そこの御主人と差し向かいで冷酒をいただいていました。その時です。御主人が言いました。
「近頃の日本人は質が落ちたねえ。」
その視線の先には先程の二人連れです。壁にもたれ、片手はグラスを握ってテーブルの上、両足をこちらに向けて投げ出しています。そこの空間だけが浮き上がって見えました。
3.はた迷惑編
やれやれと夕食をとっています。隣のテーブルは、日本人男性と若い中国人女性のカップルです。女性は綺麗な脚を組んでいます。私も美人は嫌いなほうではないので、目が行きました。
女性は脚を組んだまま、両肘をテーブルについて、左手は耳にあてて頬杖をつく格好、右手は肘を支点にしたまま箸を持って食べ始めました。背を丸めて、上目づかいで時々男性を見ています。
日本ならこんな姿勢で食事をすることを許す人はいないでしょう。子を持つ親なら怒鳴りたくなるような格好です。中国の食事マナーに照らしても、ここまでやるのは失礼です。なぜ男性は、マナーを教えてやらないのでしょう。疲れている私は、やきもきしてきました。
結局女性は終始その姿勢を続け、その間二人は楽しそうに話しながら、食事を終えました。この男性は、女性の顔以外は目に入らなかったのでしょうか。
4.勘違い編
日本で高級ホテルに長期滞在させてくれる会社はあまりないでしょう。個人的にもそれだけのゆとりのある方は多くないはずです。ところが中国では、部屋代が比較的安いことと、外国人の居住場所が限られていることから、日頃馴染みのない方でも4ツ星ホテルに滞在することになります。
そのホテルは、中華料理のメインダイニング、日本食レストラン、洋食レストラン、それにティーラウンジとバーが完備しています。
エグゼクティヴシェフと呼ばれる、日本食レストランの料理長が話してくれました。
「お客様の多くはこのホテルに泊まってらっしゃる方です。大抵、ビールを飲んで定食を食べて終わりです。」せっかくの腕も振るい甲斐がないことでしょう。ホテルの回りのクラブやスナックのネオンを見る限り、原因は推測できます。
「中には、『ハンバーグ定食はどうして無いんだ』、とか『スパゲティーを出してくれ』、とかおっしゃる方もおられるんです・・・」
私は、チャーハンと餃子まで言われなくてよかったですね、と冗談を言いかけてやめました。料理長の肩が落ちていました。
つづく