VOL.41 モテ始めたら御用心!

投稿日:1999年11月07日

モテ始めたら御用心!

1.「シャチョーさーん!いらっしゃーい!」

 とびきりの美人が出迎えです。連れの皆さんも鼻の下を長くして、ニコニコしています。ソファーに沈み込むと、両脇に可愛い女性が腰掛けます・・・。

 といっても銀座やキタの高級クラブの話しではありません。中国のカラオケラウンジでの情景です。酒を飲みながら女性と話して、歌を歌ったり踊ったり、深夜まで過ごしても日本円で一人あたり5千円もかかりません。かくして赴任したての男性連は、カラオケにハマってしまいます。

注意:中国では原則として女性が男性客の隣りに座るなどの接客方法は禁じられています。広東省のように追認して女性から所得税を取るところもありますが、国家行事の開催時期や、中央政府からの指示などにより適用が厳しくなるなど、運用にかなりの弾力性があります。知り合いの公安関係者やお店の方に情況を確認されるのが無難です。

2.「ちょっと待てよ。」

 と、ここで冷静になって考えなければいけません。今までの人生で女房以外の女性にモテたことがあったでしょうか。そうです。中国では、日本人は高級ブランドなのです。

 人としての価値は変わらなくても経済の発展度、生活水準の高さに対して一目置かれています。もっとはっきり言うと、お金を持っているからモテる、という世界共通の原則が働いているのです。

3.「今日も自炊か。」

 毎日店に通う為に外食費を削っている方が少なくありません。場合によっては、彼女にアパートを借りてやって生活費を貢ぐクンになってしまう人もいるようです。もっともその見返りがあるようですが。

4.「アサカさーん!」

 年の割には若く見える男性が入ってきました。定期的にやってきて清酒「朝香」だけを飲んで帰ります。ママを見つけると挨拶に行ったりしています。

 この男、実は「若社長」、行く目的はひたすら販売促進。本人が言っているのですから間違いありません。

 このように顔馴染みになると困ることもあります。接待で行っても、御客様よりモテては話しになりません。

5.「住所はどちらですか。」

 所は変わって空港です。私の目をみつめながら、まだ若い女性の出国審査官が尋ねました。カラオケ勤めのお嬢さんにせがまれるのならまだしも、私のような国外からの出張旅行者に対して日本の住所を訊いてどうしようというのでしょう。

 「結婚しています」とか「日本には女房と子どもがいます」という言葉が喉まで出かかりましたが、ぐっとこらえました。冷静にならなければいけません。ここは笑顔で乗り切るに限ります。

 それでもしつこく「どこで働いていますか。」と尋ねてきます。私が出張先の所在地を言うと、「どうして就労ビザを持っていないのですか。」

 「はあ?」

6.待合室で

 結局通してもらいましたが、気になったのでパスポートを見てみました。すると、前回のビザに「CANCELED」(取消)の印が押してあるのに気づきました。それで謎が解けました。

 私はこの出張にあたり、期限が迫っていたのでビザを取り直しました。中国領事館では、ビザの期間が重なることを避ける為に前のビザに取消印を押したのです。かの出国審査官は、自国政府が行っている当然の処置を知らず、取消印に不審感を抱いたに違いありません。

 やはり、出国審査官にまでモテるはずはありませんね。

つづく