北京以外のナンバーのクルマが首都北京に入る為には、許可証(進京証)が要ります。
先ず、地元の交通管理局で紹介状をもらい、
それを持って行って北京の高速道路終点の事務所で発行してもらいます。
北京で重要行事が行われる場合には、許可証の入手が困難になります。
最近の一例を、段階を追って紹介しましょう。
STEP 1.行ってから解る
全国人民代表大会の開催が近づいたある日の事です。その日は北京で商談があり、副社長共々出発です。最寄りの高速道路の入口に着くと、短機関銃で武装した警官がクルマを止めています。
何でも、
交通管理局で車検をして紹介状に印をもらって来ないと進京証は発行しないはずである、
従って今この時点で北京に向かう高速道路への進入を禁ずる
ということです。
もちろん我々が同局で紹介状を取得したときには何の通告もありません。多くのクルマが引き返して行きます。
STEP 2.誰も知らない
工事渋滞を抜け交通管理局にたどり着きました。ところが、そこで車検は行われておらず、近くの青空市場のあたりの車検場に行くように指示されました。
結構広い市場です。みつかりません。片っ端から尋ね歩きます。行列ができている可能性もあると思い、クルマが何台か連なっているところは全部尋ね歩きました。時間は過ぎていきます。
交通整理の警官が居ましたが知りません。やむなく、交通管理局に電話しました。
「みつかりません。市場のどこでやってるんですか。」
「知らない。」
「誰か知っている人が居るでしょう。」
「今は居ない。」
STEP 3.結局知らない
車検場所を知っているのは交通管理局以外にあり得ません。管理局に戻りました。副社長自身が交渉に行ってくれました。「知らないとはどういうことですか!」ほとんど喧嘩のような大声が外まで漏れてきます。
結局、局員が出てきて、「ここを真っ直ぐ行って、すぐわかるから。」と指さして教えてくれました。
言われた通りに進むと建築工事の現場を突っ切ることになります。やがて道に出ました。そこは先程の市場でした。
STEP 4.明示されない
半ば北京行きをあきらめた私を尻目に、副社長と営業マンはクルマを降りて聞き込みを始めました。
と、その時です。道路の真ん中にポケットに手を突っ込んで、無帽かつ襟元をはだけた警官が立っています。さっき来たときには居なかったはずです。
一台のタクシーが勢い良く走ってきて、急ブレーキをかけて止まりました。警官はうなづいて道端に止めた白い民間車両に近づき、紹介状に印を押してタクシードライバーに渡しました。何と、その白いクルマと中に座っている一人の民間人、そして彼自身が車検場だったのです。
STEP 5.常時開かれない
民間車両と警察のナンバーの違いは誰でも知っています。さっきこの車検場氏は、クルマの中に居たのでしょう、発見できるはずがありません。
いよいよ我々のクルマの車検。さっきと同じ急ブレーキテストだけ、「キキー!」問題なく停止です。もう一度やれとの指示、ここでクレームをつけられたのでは、北京に行けません。副社長は、私が外国人であることを知らせれば効果があるかと私に日本語で話しかけます。
結局、車検場氏は印を押してくれました。2時間の遅れです。ブレーキテストだけなら高速道路の入口の広いスペースを使ってもできます。北京への流入を制限するために故意に行われているシステムとも考え難く、無責任主義の重層化によって引き起こされた問題のように思われます。
全人代が効率的な社会の実現を目指すことを祈りつつ北京に向かいました。
つづく