食事のマナーは、えてして気になるものです。「無くて七癖」と言いますが、私も気がつかない内に他人に対して不愉快な思いをさせているのかもしれません。しかし、今回は敢えてタブーに挑戦です。
1.一般的には
中国では食事のマナーについてはおおらかです。左手は椅子の上に置き、あるいは肘をついて、口を皿に近づけて食べるというのが標準スタイルです。足の方はというと、女性であっても股を開いたり、足首をもう片方のひざに載せていたりするのも特別なことではありません。
この肘をつくということについては、ある中国通の方から、中国では肘から手までをテーブルの端に沿って置いて食べるのが正式な食べ方であるとも聞いたことがありますが真実の程はわかりません。
2.納得
「まさか、冗談でしょう!」とか
「中国に対する偏見やないの?」
そう思われた方は、西洋マナーや日本のしつけという価値観にとらわれすぎています。世の中には全く異なった世界もあるのです、しかも身近に。一度中国に行けば容易に確認できます。
日頃それに接する私は、気になってしようがなかったのです。
「それが習慣、日本と違うのは当然のことで、真似するかどうかは別にして、そのまま受け入れるのが正しい姿勢のはず・・・。」
自分に言い聞かせている内に、なんとなく納得してきました。
3.日本料理店では
食事どきともなれば、得意先の店で営業マンと食事ということになります。何も言わなければ、彼は中国流に食べ始めます。「日系の会社なのに日本の食事マナーもしつけていない」と思われるのは営業上マイナスです。従ってこういう場合に限り、日本流にやってもらう必要があります。
「日本料理店では、じっくり酒を飲んでいる時以外は、肘をついてはダメ、左手を椅子に下ろすのもダメ。食事中、両手は必ず手首から上だけをテーブルの上に出しておくこと。そのかわり、茶碗、汁碗以外にも小皿、小鉢の類(たぐい) は左手に持って食べても構いません。」
4.変化の兆し
日本でもテーブルで食事をする機会が増えるに従い、欧米流のマナーが取り入れられたのでしょうが、中国でも最近はその傾向にあるようです。
少し前、ある番組をみていると、売出し中の少女歌手のマネージャーがその歌手に食事マナーを教育しています。
「口にものをほおばったまましゃべってはいけません。箸はちゃんと持ちなさい。食事の時は肘を脇につけなさい。」従ってテーブルに肘をつけないわけです。
5.西洋料理店では
庶民が行く店ということで、一般の中国人のマナーなど洋食へのなじみ具合を見る格好の機会です。楽しみにして出かけました。
結果は、箸をフォークに替えて洋食を食べている点を除けば、全くの中華料理店の様相でした。料理の注文の仕方も、スープ、前菜、メインディッシュを各自それぞれ注文するのではなく、何種類かをとってテーブルの中央に並べ、それを皆でつつき合っています。大声の喧噪の中、床が灰皿となり、どこかのテーブルで開けたのでしょう、中国焼酎の強烈なにおいまで漂ってきます。
6.めぐりめぐって
欧州では厳しくしつけられる家庭も多いようですが、日本でもそうではないでしょうか。しかし実際は、ファーストフードの普及と共に米国流に歩きながら食べたり、地べたに座り込んで食べたり、最近は変化が著しいようです。そんなことや中国のおおらかさを見ているとかえって気になり、家庭で子どもに口うるさく注意することになります。
「お父さんかて、タバコ吸いながらごはん食べるやん。」
子どもにとってはいい迷惑かもしれません。
つづく