1.国際線空港使用料
窓口は一つだけ、百元札を渡してチケットと10元札の釣りをもらうだけなのでそれで十分です。
私の前に3人います。一人は今買っている人、その後ろに中国人らしいアベックが横に並んでいます。飛行機が飛ぶ時間帯ではないので、カウンター前にはこの4人だけです。私は4時間後の飛行機に乗る人の為に予めチケットを買っているのです。
2.何してんの?
何分か待ちました。
前の女性がその場を離れていきました。さっきから買っているはずの人が窓口をふさいだまま携帯電話で話しています。私の左前の男性は、その場に立ったまま買う気配がないので不審に思い、横に回って覗いてみました。
カウンターの上には、チケットと釣り銭が既に置かれています。
要するに先頭の男性は、チケットの購入が終わったにもかかわらず、その場で電話をかけている訳です。私の左前の男性は、さっきの女性をその場で待っているのでしょう。
中国では購入する人の迷惑になるから、などと細かい神経を使う人は必ずしも多くありません。
3.思いがけず
先の人が買わなければ次の人が買うのが常識というものです。私は電話をかけている人の隙間から百元札を出して、「国際一張。」(国際線用のを一枚下さい。)
と言いました。すると突然、「こら!並んでんだよ!ならべ!」と耳元で大声がしました。もうチケットと釣り銭が出ています。
日本語です。アルコール臭い息です。振り返ると私の左前にいた人のようです。
見た目は、色黒のやせ形で背が高いので北方の中国人といった感じですが、言葉から判断すると二日酔いの日本人のようです。
そこで私も日本語で、「前の人が買い終わって電話をしてるのに、あなたが買わないから先に買わせてもらったんです。」
すると、私が日本人とは思いもよらなかったのでしょう、ちょっとひるんだ様子です。
4.分析
こんな人を時々見かけます。
中国では言葉や習慣が異なるので、ストレスが貯まりやすくなります。そんなとき、日本語で中国人を怒鳴ってストレスの発散をするのです。
たぶん彼は隣の彼女にチケットを買ってもらうところだったのでしょう。そして中国の人が並ばない事は知っていても、チケットの窓口を塞ぐことに抵抗感がないことは知らなかったので私の表面上の動きを見て割り込みと勘違いし、こいつは中国人に違いない、従って日本語で威嚇する、という行動に出たようです。
5.常識とは
「日本人だったらそういう場合は、前の人に声をかけるのが常識だろう!」私が日本人とわかったらこう出てきました。
「前の人が買い終わって電話しているのに、あなたはどうして買わないんですか。」とでも声を掛けるべきだったのでしょうか。中国の空港ですから基本的には中国人であることを想定して中国語で、もしくは国際空港ですから英語で話すことになるでしょう。一般の日本人にそれを期待することは望めません。
「ここは中国ですよ。」私が教えてやりました。
6.捨てぜりふ
「だから日本人はバカにされんだよ!」
その時女性が戻ってきました。彼はよほど気が済まなかったのでしょう。彼女に「こいつ割り込みやがるんだよ。」などとアピールしていますが、中国人らしいその女性は全く取り合っていません。
「大阪人だろ。」いかにも侮蔑するような口調でダメ押しです。関西のアクセントで話せば大阪人、こういうステレオタイプの考えがストレスを生み出す原因かもしれません。
一方、電話をかけていた当の本人は終始何ら煩わされることなく、そのまま携帯電話で話し続けていました。自分が原因で二人の外国人に不愉快な思いをさせたとは夢にも思っていないことでしょう。
常識の違いは、時として恐ろしいものです。
つづく