このところ中国の失業問題が新聞紙上によく取り上げられています。食べていけない人たちによる盗みなどの治安の悪化も社会問題化しています。
弊社でもこのまえ、営業車を盗まれてしまいました。その地域では頻発するのでしょう、警官も自分たちの成績に影響することを恐れて盗難証明書を出し渋る始末です。
今回は、失業問題を簡単な事例で、解りやすく解説してみましょう。
1.プライド
中国の経営幹部など誇らしげに次のような事を口にします。例えば、自転車メーカーの場合です。
「解放後、ずっとこの頑丈な自転車を、人民の為に供給し続けてきたのです。」
それがイケナイことであるなど思いもよらないのでしょう。少なくとも改革開放経済がスタートしてからのこの20年間は、市場のニーズに合ったものを作らなかったことが、経営者としては失格です。クルマの普及した今どき、頑丈な実用車を買う人はあまりいません。
2.失業の図式
売れる物を作らない、労働者にやる気が無い、作っても品質が一定しない・・・・、従って製品が売れません。そんな訳で、多くの国有企業は、赤字です。金利の高い中国では雪だるま式に借入金がふくらみます。
銀行は貸してくれませんから、賃金も支払えません。原料を仕入れる金もなく、仕事もできません。いわゆる社内失業状態です。
3.改善の方法
従業員持ち株制で、企業に活力を回復させようという動きがあるそうです。非常に結構な考え方です。欧米や日本でも広く取り入れられています。
従業員に出資させることにより自分たちの会社であるとの意識を持たせ、参加意識を高めるのです。自ずとやる気もそそられるはず?です。
4.改善の実行
ある日、経営幹部が次のように言い渡します。
「皆さん、会社に出資して下さい。出資した人にだけ賃金が支払われます。」
例えば、千元出した人には、500元の給料を払ってくれるわけです。残りの500元は、利払いや経営幹部の給料などに消えます。お金が無くなると、次の募集が始まります。
「皆さん、会社にもっと出資して下さい。出資しない人は、クビです。」
タコが自分の足を食って生き延びるようなもので、長続きするはずがありません。それに気付いた人は出資せず、失業します。
5.経営者の課題
従業員が減れば会社の負担が減り、いわばリストラに成功したと言えるのでしょうが、その後の事業展開が見えてきません。
従業員のやる気の前に、経営者の改善が必要なようです。しかし、社会主義市場経済を生き抜く資質と能力のある経営者は多くはありません。失業問題は根が深いのです。
6.改革の流れ
現在、中国政府は朱首相を先頭に、ダメな企業は潰し、残す企業には人的・物的経営資源を重点配分して黒字化させるべく、全力を投入し始めました。中国の安定成長は、東南アジアのみならず世界経済の安定の為にも不可欠です。
外資導入で輸出主導の高度成長を達成、外貨保有高も日本に次いで世界2位になったそうです。今度は国有企業の改革に力を入れる段階に入ったとみてよいでしょう。世界中の人々がその成果に注目しています。
つづく