1.前書き
言葉はその言語を有する人々の生活、習慣と共に生まれ育ってきたものです。外国語を訳す場合、単にそれに対応する言葉があるからといって、その通りの使われ方をするとは限りません。そこに語学教育の難しさがあります。
2.入門編
例えば、挨拶です。学校では次の様に教えています。
お早う | ニーツァオ(ニーは二人称、ツァオは早) |
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こんにちは | ニーハオ(ニーは二人称、ハオは好) |
今晩は | ワンシャンハオ(晩上好) |
おやすみ | ワンアン(晩安) |
間違いありません。これを覚えるところから学習が始まる、いわば基本です。
3.中級編
では、日本語と同じ情況で使われているのでしょうか。その違いの認識が次の課題です。
実際には朝、昼、晩の挨拶は全て「ニーハオ」が使われます。寝る前の「晩安」は英語の「GOOD NIGHT」の直訳で現実には、ほとんど使われていないそうです。
それならば、「ニーハオ」さえ覚えれば全て通じる事になるはずですが、実は学校では教えないもう一つの挨拶の仕方が存在するのです。それが、「チーファンラマ(吃飯了馬)?」(ご飯食べた?)なのです。
中国で生活されると、「ニーハオ」が使われる場面で、頻繁に「チーファンラマ?」がその代わりをしている事に気付かれるはずです。筆者も初めて中国に行き、学校の寮に入った事があります。
最初の内は、こちらが外国人と云う意識があるからでしょう、「ニーハオ」と返していたのが、その内、親しくなると「チーファンラマ?」になっていました。戦前満州(現在の東北地区)に住んでいた方からもそう聞きましたので、最近の流行というわけでもなさそうです。
朝会えば「チーファンラマ?」。昼近くなると「チーファンラマ?」、昼御飯が終わっても「チーファンラマ?」。夕方5時頃からの夕食時も同様です。
4.実践編
こういう事を知ってしまうと使いたくなるのが人情というもの、では実際に使ってみましょう。
- A.親しい関係である事
- B.食事の時間に近い事
- C.相手が食事を済ませているか不明である事
特にA.の要件は重要です。いきなり初対面の人に向かって使うと、変なやつと思われるか、かなり親しみを以て迎えられるかの二つに一つです。とりわけビジネスの場合はそのような冒険は冒さないのが無難でしょう。
結論として、挨拶は「ニーハオ」であるが、上記要件を満たす場合には「チーファンラマ?」を使うのが中国の一般的情況と言って良いでしょう。又、英国人は挨拶の時、天気を話題にすると言われています。
日本でも、「お早うございます、いい天気になりましたね。」とか、「寒いですね。」などと言うのが一般的ですが、中国では一言、「ご飯食べました?」で済むようです。このあたりに民族性が現れているのかも知れません。
5.応用編
よく観察していると、食堂から出てきたばかりの人にも「チーファンラマ?」とやっています。こうなると更に汎用性が広がることになりますが、こればかりはもっと中国に慣れるしかなさそうです。言葉は難しいものです。
つづく