乗客と乗員は共に人民として平等であるとして、「サービス」そのものが否定されていた共産圏では、事実上機内サービスは存在せず、その乗り心地の悪さには定評がありました。旧ソ連のアエロフロート然り、中国の民航も然りです。民航はその後分割されましたが、情況は徐々に改善されているものの、やはり不便さは付き物の様です。
嫌なら利用しなければ良い訳ですが、格安パッケージツアーや、冬場の日本の航空会社の便が少ない時期にはビジネスでも、利用せざるを得ない事があります。そこで今回は航空会社名は明らかにしませんが、エコノミークラスの一般的な情況を御案内致します。
1.心構えの大切さ
一刻も早く中国の大地を踏みしめたい、四千年の歴史に触れてみたいと焦る気持ちのあなた、そんなあなたが危険です。香港や台湾に行ったことがあるからと安心しているあなたも危険です。飛行機を降りる前に嫌にならない為に、或いは「二度と行きたくない」などと言わない為に、又帰国する頃に精神的にボロボロにならない為にも、先ず最初の心構えが大切です。
個人差はありますが、「香港と同じ」とたかをくくっていたある友人に、帰国後一週間悪夢を見続けた者がいます。因みにその後友人に「もう行きたくないか。」と私が尋ねたところ、「こわいもの見たさというのもあるから、次回は女房を連れて行く。」と行ってくれたのが救いでした。一歩機内に入ればそこは中国、もう外国なのです。
2.乗り込み方
搭乗ゲートから通路を歩いて行くと、やがて飛行機のドアに着きます。そこには二名程度のスチ ュワーデス(女給仕)もしくはスチュワード(男給仕、最近は男性も増えている為、海外では一般的 に男女を問わずフライトアテンダントと言う)が立って出迎えてくれます。ここまでは同じです。
一歩機内に入ると独特の臭いが鼻を突きます。湿気た部屋の臭いと、風呂に入っていない体臭が入り交じった様な臭いです。しかし、嗅覚細胞は直ぐに疲労しますので、間もなく気にならなくなります。
機内を進むと残りのフライトアテンダント達が椅子に座って互いにしゃべったりくつろいだりしています。この情景を見たくない方は、列の後ろに付いて後から機内に入って下さい。席が埋まるに連れ、彼女や彼等は椅子から離れます。
3.直ぐにやるべき事
シートに座る前に汚れていないか、濡れていないか良く調べて下さい。中国の飛行機は朝、中国を立ち、昼頃に日本に到着します。自ずと中国人の客が多く、その一般的な傾向として、後から座る人に気を使う事は多くないからです。
シートに座ると先ず、壊れた箇所が無いか調べます。機体の整備はしても客室の故障個所は直さない事が多い様です。
A.シートの背もたれが正確にリクライニングするか、もたれてもそれ以上倒れないか、これは離陸時にGがかかりますので安全上重要な事です。
B.テーブルがあるかどうか。ときどき引きちぎられて無くなっている席があります。食事の時に困りますので、これ又要チェックです。
C.読書灯が点くかどうか。機内を快適に過ごす為に雑誌や書物、新聞は不可欠です。窓際の席でない方は特に重要です。
4.問題の解決方法
さて、壊れた箇所があったとして、シートを替わる必要が生じた時はどうすれば良いのでしょう 。 「ねえちゃん、ここ壊れてるやん。シート替えてよ。」では、通じません。関西弁でなくとも通じません。彼女や彼等は外国語を解さないのです。国際線に乗っていても学習する気が無いのか、日本語はもとより英語も、イエス、ノー、オーケイ位のものです。
身ぶり手振りで、壊れている事を示し、席を替わる事になりますが、もっと良い方法があります 。それは、同時に英語を使う事です。
日本でも昔、アメリカ文化にあこがれ、又英語を話す人が尊敬の目で見られました。今でも横文字の氾濫することおびただしいものがあるではありませんか。今現在、中国人の英語信仰及び白人信仰はすさまじいものがあります。英語の講師でも、私の知っている中国系アメリカ人は肌の色が黄色いので雇って貰えず、「英語が母国語でない欧州人を雇う。」とぼやいていました。
ですから、例えば、テーブルが壊れているなら、”This table is out of order. Can I sit there ? ” と身ぶりを交えて座りたい席を指差せば、これだけで良いのです。即座に「行(シン)」とか 「オーケイ」とか言ってくれます。後の待遇も良くなります。
5.最後のチェックポイント
通路側の席の場合は、上の棚の荷物の置かれた状況を確認する必要があります。中国の方は着陸時に未だブレーキをかけている時に立ち上がり、荷物を取り出し始めます。荷物が頭に落ちてくる可能性が極めて高いので、要注意です。席の真上と直ぐ後ろの棚を良く調べ、改善できそうも無ければ席を替わる事をお勧めします。
6.おしぼり
フライトアテンダント、特に女性は、中国国内での食堂同様、客の有無に拘わらず、暇さえあればまわりにはばかりなく大声でおしゃべりをします。食事の片づけが済んだ時点から始まりますので、気になる方は彼女達がたむろしそうな場所を避けて席を取られる事が肝要です。
7.機内アナウンス
中国語、日本語、英語の三ヶ国語であります。アナウンスする女性は外国語ができませんので、中国語の他は、発音を書き付けたものを棒読みしているだけで、ときどき読み間違えるので、三つの内容は必ずしも一致しません。
8.飲み物の頼み方
一般常識に反して、飲み物より食事が先に提供される事が多い様です。飲み物が来るまで食事を待つのは致し方ないでしょう。
さて飲み物ですが、フライトアテンダントは、日本語は、「ビール」、「お茶」、「ワイン」位 しか解りません。ワインやジュースは冷えていないので、氷を入れるか尋ねてきます。もちろん中国語です。そこで敢えて英語を使います。日本製ビールならば、”Japanese beer, please.”、白ワインに氷を入れてもらうなら”White wine and ice, please.” と言えば良いのです。これらの単語 は彼女や彼等は一語も聞き取れませんので指差して思う物を提供してもらいます。
「なぜこんな面倒な事を」と思われるかもしれませんが、お代わりをもらう時に役に立つのです 。”More”と”Please”の間に欲しい物を入れて頼めば、嫌な顔をしながらも間違いなく持ってきてくれます。これが、中国語で頼むと「没有了(メイヨーラ、無くなったの意味)」と言われて終わりです。日本語でも効果が期待できない事が多いので、効果の確実な英語を使用される事をお勧めします。
9.おしゃべり
フライトアテンダント、特に女性は、中国国内での食堂同様、客の有無に拘わらず、暇さえあればまわりにはばかりなく大声でおしゃべりをします。食事の片づけが済んだ時点から始まりますので、気になる方は彼女達がたむろしそうな場所を避けて席を取られる事が肝要です。
10.備えあれば憂い無し
さて、心構えはできましたでしょうか。エキゾチックな中国大陸が待っています。
では、行ってらっしゃい。楽しい空の旅を・・・・・、Good luck!
つづく