VOL.3 やっぱり食は中国に在り

投稿日:1996年10月05日

やっぱり食は中国に在り

 仕事がら中国沿海諸都市を訪れる機会も多く、その都度庶民が食べる店に入ります。「北京宮廷料理」、「上海料理」、「潮州料理」、「広東料理」など、立派な看板を背負った店では無く、その地域の庶民が行く店で食べるのです。

 外資系ホテルや外資との合弁レストラン以外では、概ね掃除も行き届かず清潔感に乏しいのですがそれはそれ、慣れてしまえば、料理の味と価格の安さがそれを補ってくれる事がしばしばです。

1.店の選び方

 特にコツはありませんが、ある程度人が入っている店が安心でしょう。今まであまりはずれた事はありません。

2.料理のオーダー

 言葉のできる人、事情に通じている人と行くのが無難です。もっとも言葉がうまくできなくても他人が食べている物を見ておいしそうな物をまねして頼む手もあります。私も最初はメニューに書かれた文字列がどんな料理を意味するのか解らず、その手を使いました。その場合、外人と見れば値段をふっかけて来ることがありますので、値段はその都度確認される事をお勧めします。

3.ビールの頼み方

 ビールは冷えていないのが普通ですから、冷えているか手で触って確認するのがベスト。冷えていなければ冷やして貰うか、冷蔵庫が店に無い場合は、さっさと店を変わる事です。最悪の場合は生ぬるいビールを我慢して飲んで下さい。

数える単位は、瓶なら「瓶(ピン)」、ジョッキならば「杯(ペイ)」、ここまでは簡単です。
 難しいのは、缶の場合です。「ビール一缶(イークワン)」と言っても北京・天津等北の方では通じません。英語の「TIN」の発音から来たのか「聴」と言う字を使 うのです。一缶なら「一聴(イーティン)」、二缶なら「両聴(リャンティン)」と言ってみましょう。これであなたもちょっとした通です。

4.地域の特色

 日本の即席ラーメンには、北京風などと言う塩味スープのラーメンがありますが、中国北方には、日本で普通「ラーメン」と呼んでいる汁ソバはありません。最近では広東料理店等もできて少しは食べられる様になってきましたが、庶民の行く店には無いと考えて良いでしょう。茹でた麺に調味料をかけただけの物、炒めた具を載せた物、或いは焼きソバを食べる事になります。

 北方の料理は、基本的には炒め物が中心です。味が濃いと良く言われますが、最近 はそれ程でもない様です。特に、天津は海の幸が手に入りやすい事から海老やシャコを塩茹ででそのまま食べられます。又、味付けは濃いですが海の魚の炒め煮も食べら れます。
 又、同じ北方でも大連、青島は更に海に近い事もあり時には生で魚貝類を食べられます。但し衛生観念が日本人とはかなり異なりますので、現物を確認してから貝類等は熱湯でさっと湯通しするのが安全です。茹でた貝や海老、イカやタコをあっさりと炒めた物など、美味の極みです。

 上海に行きますと、中国特有の色の濃い醤油はあまり使わず、素材の色彩を生かしている様に見受けられます。味付けもあっさりしたものが多い様です。化学調味料も使っているのでしょうが、北方で時々見受けられる程ではありません。香辛料も少なく素材の味が生きています。

 広州はなんといっても飲茶(やむちゃ)です。店員が蒸し立てのシュウマイや餃子、豚まん、あんまん等「点心」と呼ばれるものをカーゴに入れてテーブルの間を回ります。その他に料理も頼めます。 お茶を飲みながらそれらを食べ、にぎやかに話に興じます。夜はお酒を飲む人も多くなります。

 テーブルに着くと「お茶はなににしますか。」と尋ねられます。殆どの人は烏龍茶 か鉄観音を飲んでいる様です。マナーの事は良く解りませんが、各テーブルに急須は一つ、同じ茶を互いに注ぎ合うのでしょう。個人個人で別の茶を頼まないようです。又、花茶(ジャスミンティー)を頼む人は居ない様です。花の強い香りがあっさりした料理と喧嘩してしまうのでしょう。逆に油濃い北の料理には花茶が合うのかもしれません。

5.酒の事

 お茶と同じ事は酒にもあてはまるのでしょう。北では雑穀で造った蒸留酒、アル コール度数も香りも強いものです。南では紹興酒を代表とする米の醸造酒(ライスワ イン)です。もっとも食生活がどんどん豊かになっていますので、それに合わせ中国 でも低アルコール化の流れが進行しています。ビールの消費が増え、葡萄酒(ワイン)が小さな食堂にも普及しています。中国ワインは入門者向け、フルーティーな甘口が主流です。
その他天津では、弊社の清酒「朝香」を提供する料理店も増えてきました。これを飲む中国人にとっては、ちょっとおしゃれな選択だそうです。

6.食事のマナー

 よく中国通の人が「料理を全部食べたら足りない事を意味するので残さなくてはいけない」、「魚の骨や海老類の殻などを直接テーブルにちらかしてテーブルを汚したことが満足を示した事になる」などとおっしゃいます。これは、一面で真実ですが、外人が仲間内で食べるのにそんなに気を使う必要はありません。食べられる分だけ注文し、ガラは、別に皿を貰ってその中に捨てれば良いでしょう。灰皿も普通の中国人は使いませんが、要求して、貰えば良いと思います。仮に招待された席でもガラと灰皿は実行しても相手は不愉快に思わないでしょう。日本流で行こうではありませんか。

7.身近な交流

 中国でも外国人があまり行かない店、特に繁華街を離れる程、外人は珍しいので、よく店の人が話しかけてきます。そんな店の多くが個人経営です。そして一旦友達になると今日はこれが旨いと勧めてくれたり、「これは店からのプレゼントです。」などと料理を差し入れてくれたり、食事代は要らないと言ってくれたり、嬉しい事です。でも私は礼儀を失さない程度にお金を置いてくることにしています。かえって気を使って次から行きにくくなるからです。

以上、如何だったでしょう。機会の許す方、あなたも食事を通して庶民レベルでの日中交流に参加してみませんか。