とんど、大吟醸の酒造り vol.146

投稿日:2017年2月15日

<とんど>

とんど

 毎年2月2日はとんど。正月飾りを燃やします。とんどに使う田んぼは昔から変わらず、或る一角で行います。

 私が小学生の頃は、夜明け前の暗い時刻から「とーんどや!」と大声を出しながら祖父に連れられその田んぼまでの100メートルを歩き、焼き終わって朝食。それから学校に向かいました。

 今は、少子化で子供も少なくそんな家庭はなくなりました。三々五々、各々の家から焼きに来られます。我が家も酒蔵の朝礼が終わってから私が一輪車に正月飾りや昨年の御札(おふだ)などを乗せて運び、火をつけました。火の番をしていると向かいの方が焼きに来られたので後はお任せし、蔵の仕事に戻りました。

 とんどが終わると正月気分も一掃されます。2月4日は立春。暦の上ではもう春です。

<酒蔵の様子>

 12月に仕込んだ酒(原料を投入し、攪拌する作業を仕込みと言います)は1月中に搾り終えました。我々が栽培した山田錦米を原料とする奈良吟、こをろこをろ、三日踊山乃かみ酵母の原酒を聞き酒しましたが、何れも上出来です。

 先月から今月に掛けて一年で一番寒い時期を迎えます。この間、大吟醸など高精白米(たくさん米粒の外側を磨き落とした白米)を原料とする酒造りを行います。一本、一本の仕込みは真剣勝負で失敗が許されません。

 とりわけ精米歩合35%の出品用大吟醸は気が抜けません。

 麹は少し早めに作って枯らしと呼ばれる乾燥期間をおいています。引き締まった麹で米の溶け具合を引き締めます。

 掛け米も正確な吸水、そして蒸しを行います。放冷(ほうれい)と呼ばれる蒸米の冷却作業の後、直ぐには仕込まず放置して表面を乾燥させます。

 一つ一つ、確実に、丁寧に、作業が進んで行きます。

 1月31日は都夏(つげ)本店(小田急小田原線下北沢駅近く)で新酒を楽しむ会が開かれました。松江、丹波、信濃の蔵からとびきりの新酒が提供され、清酒ファン60名が料理と共に楽しむ趣向。その後半部分を使って蔵元を囲む会。筆者が蔵元として参加し、三種類の三日踊を楽しんでいただきました。

 無濾過生原酒はレモンのような爽やかな酸を含むところ、大好評。

 続いて純米吟醸は華やかでありながら料理の邪魔をしない素直さに驚嘆。

 最後は山乃かみ酵母で醸した純米吟醸。山乃かみ酵母といえば大神神社の神域に咲く笹百合から分離した奈良県独自の花酵母。花酵母の酒は酸味が立ちがちですが、トロピカルフルーツを思わせる甘さと酸が調和し、多くの方から「旨い!」とお褒めの言葉を頂戴しました。

 同店では今後この三日踊山乃かみ酵母を置いて下さるそうです。

写真:とんど