<蔵の様子>
土用(どよう)粕の出荷が最盛期を迎えています。もろみを搾ってできた酒粕はタンクに入れて上から踏み込んで空気を抜き、密封貯蔵します。粕に含まれる糖化酵素が働いて初夏には柔らかくなります。
夏の土用の頃に出荷のピークを迎えることから、土用粕と呼ばれます。近所では奈良漬けを作る家庭も多く、7月から出荷が始まりました。瓜や胡瓜の収穫時期が終わる頃に在庫もなくなります。
美味しい奈良漬の漬け方は、酒蔵便りVOL.45、次の頁を参照下さい。
https://www.sake-asaka.co.jp/blog/2008/08/vol45.html
昨年家庭で漬けたものを食べていますが、粕だけの甘味とは思えない素晴らしい仕上がりに自己満足です。
6月に植えた山田錦は順調に生育しています。この時期、「土用干し」と言って田の水を切ります。稲の根本の土が乾いて、根は水を求めて深く張ります。深く張った根は水分や栄養をしっかり吸収することができます。8月末に稲穂が出ると水を張り、秋には充実した米を得ることができるのです。
<今月の話題> 夏の土用
「土用粕」に「土用干し」。それに「土用の丑の日」。この日、鰻を食べる習慣は18世紀(江戸時代中期)の学者・平賀源内が売れない鰻屋を助けようと考え出したとも言われていますが、暑さが頂点を迎える直前に、夏を乗り切れるように鰻で栄養を補給するという生活の知恵です。
この「土用」と呼ばれる期間ですが、中国の古代思想から来ています。紀元前、中国で確立された五行思想は、万物を木・火・土・金・水の五つの要素からできていると考えました。我々が今日も使う「五色」(青・紅・黄・白・玄(くろ))、「五穀」、「五味」などもこの考えに由来します。
季節も五つの要素に当てはめました。春は木(気)、夏は火(気)、秋は金(気)、冬は水(気)。残った土気は季節の変わり目に置きました。即ち立春、立夏、立秋、立冬、各々の直前の約18日間を「土用」としました。
夏の土用は、毎年7月20日頃から8月6日頃。「丑の日」は、日々に順に割り当てられた十二支が丑(うし)にあたる日のことです。十二支は12日毎に一巡しますので、土用の18日間に丑の日が二度ある年もあります。今年の丑の日は一度だけ。7月27日(金曜)でした。皆様は鰻を召し上がったでしょうか。
因みに、鰻は脂肪やタンパク質に富むのみならずビタミンの宝庫と言われます。とりわけ毛細血管の働きを活発にして肌に良いビタミンEは、鯖(さば)の3倍、豚肉の20倍以上。血管を拡げて血圧も下げてくれる日本酒と組み合わせれば、血流が良くなり元気回復。お肌もスベスベです。夏を乗り切るには、鰻と日本酒が決め手です。
写真1:土用粕12kg入袋1,260円
写真2:成長した苗(中谷酒造管理田7月30日)
写真3:土用干し(同。稲の根本の土にひび割れ)
写真4:あまりの暑さに昼寝を決め込む熊のスパンキーくん(赤鼻のトナカイくんも)