大吟醸の酒造り vol.86

投稿日:2012年2月17日

<蔵の様子>

 はや二月。気がつけば陽光は明るさを増しています。一年で最も気温が低い月ですが、気持ちは春の訪れに浮き立ちます。

 酒蔵では酒造りが休むことなく続いています。弊社では精米歩合35%の大吟醸酒をタンク3本に仕込みます。先月から順次麹を作り、酒を仕込んでいます。今月は仕込み終えたタンクのもろみ管理に神経を集中しています。

<今月の話題> 大吟醸の酒造り

大吟醸発酵タンク

 我々が食べる白米は、米粒の外側に脂肪やタンパク質といった澱粉以外のものが含まれています。これは米の味を決める重要な要素ですが、これを加工して酒にすると雑味の素になります。

 そこで清酒醸造に使う原料米は、特殊な精米機を使用して米粒の外側を磨くように削り、残った米の芯をだけを使います。芯に近いほど純粋な澱粉が得られますので弊社の大吟醸の場合は、精米歩合35%。即ち65%分を磨き落とした、小さな米粒です。

上から見る発酵タンク

 蒸した米に麹菌の胞子を振り、温度と湿度管理をしながら約2昼夜で麹を作ります。

 胞子を振る前の蒸し上がった米の水分含有量を一定にするために吸水前の米の水分含有量を計り、標準との誤差を補正し、正確に28%だけ吸水させ、それを一定の圧力の蒸気で、一定時間だけ蒸します。重量計、温度計、水分含有量計が活躍します。

 製麹機と呼ばれる設備には幾つもの温度センサーが付き、時間経過毎に温度と湿度の管理ができるように複数のタイマーまで付いています。麹を作る作業は精密な管理の下に行います。

 米を蒸してから通常の麹ならば48時間で出来上がり。甘い栗のような香りが立ち昇ります。大吟醸の麹ならば更に半日多く掛かります。

大吟醸発酵もろみ

 次は仕込み作業。「仕込み」とは、原料を投入して攪拌する作業のことです。

 原料としてタンクに投入する蒸した米は、掛米(かけまい)と呼びます。これの吸水率は26%です。麹米より少し固めに蒸し上がります。麹、水と共にタンクに投入します。一回目は少し、一日置いて酵母菌の増殖を待ち、二回目、そして三回目と投入する原料を増やします。こうして三回で仕込みを終えます。これは大吟醸に限らず清酒造りに共通する方法です。

 吟醸酒は、クリアな味わいに仕上げる為に酵母菌の限界とも言える低温で発酵させます。発酵過程で酵母菌は熱を出しますので、もろみを冷却し、ほぼ10℃に保ちます。ある程度アルコール度数が上がって来たところからは、徐々に温度を下げ、6℃で保ちます。酵母菌は苦しみながらも甘い爽やかな味わいを作ってくれます。

 今月一杯、発酵管理をして、来月は順次圧搾の予定です。旨い酒ができるのを祈ります。

この号終わり

写真1:大吟醸発酵タンク
写真2:上から見る発酵タンク
写真3:大吟醸発酵もろみ