<蔵の様子>
梅雨に入りました。曇り、時々雨。雲間から射す日光は夏の力強さを持っています。
6月8日に植えた山田錦の苗は順調に育っています。
弊社では、苗と苗の間を広くとって、疎(まばら)に植えています。こうすると日光が根本に届き、根は深く張り、株別れも盛んになります。秋の収穫時期に台風が来ても倒れにくくなります。風通しも良く、病害虫に強くなり農薬を撒く必要もなくなります。
梅雨の晴れ間から射す日射しに、田の水面がキラキラと輝きます。苗は根付き、すくすくと伸びています。葉の色も少しずつ緑が濃くなっていきます。この米は、「奈良吟(ならぎん)」などの原料米になります。
<今月の話題> 懐かしのスパイ
田植えの疲れを癒そうと古いスパイ小説を読み返しました。
「ジョージ・スマイリー」と聞いてピンとくる人はかなりの通。英国の作家ジョン・ル・カレが生み出した英国情報部職員です。
そのジョージ・スマイリーが言います。
「情報が不足しているからといって意見の表明をおもいとどまる女など、この世に存在しない。」("TINKER, TAILOR, SOLDIER, SPY" by John le Carre 第一部10)
女性が日々強くなる昨今、共感される男性諸氏も少なくないことでしょう。
ジョン・ル・カレの出世作「寒い国から帰ってきたスパイ」は、名優リチャード・バートン主演で映画化されました。
原題は、「The Spy Who Came in from the Cold」。日本語の題名は誤訳です。
訳者は、「the Cold」が閑職に追いやられている情況(窓際に追いやられているとか、仕事を干されているとか)を意味することを知らなかったそうです。
正しくは、「復帰したスパイ」。しかし、小説を読んだ方はご存じの通り、この題名は極めて見事に内容を象徴しているのです。「天下の迷訳」とされる所以(ゆえん)です。「人生万事塞翁が馬」。
この号終わり
写真1:伸びゆく苗
写真2:ジョン・ル・カレ著「スクールボーイ閣下」(早川書房)